ギターコレクション (5) 「ヤマキ」ストラトキャスター型ギター 型番不明
2015/04/23/23:49:36(Thu)

1970年代から1980年代のはじめ頃まで、アコーステイックギターでかなり高い評価を得ていた「ヤマキ」
今でも、コンディションの良い中古品は高値で取引されています。
そんな「ヤマキ」が電気ギターも作っていたとは、このストラト型を拾うまで知らなかった!
そう、このナチュラルボディのストラト型ギターは、ウチの近所に粗大ゴミとしてバラバラな状態で捨てられていたのです。
部品取りにあった状態で、所々パーツが欠品してましたが、ネック、ボディ、ピックアップ(以下、PUと略)、糸巻、ブリッジユニットなどはしっかりしており、十分復元可能と判断しました。
私の手持ちのジャンクパーツから補完してやり、復元したのが上の写真の姿ですが、新たに買ったパーツは無いのでこの時点での復元費用は 0円。
しかし、補完したアームに黒色塗装が施してあるなどトータルコーディネートとしてはやや見栄えが悪い。
今回、友人の※などが協力してくれてビルローレンスのPU L-250が三つ揃ったので、PU交換と配線材をベルデンの高品位な物に替えてやることにしました。
セレクタースイッチ、ボリューム、トーンなどは特に問題が無いので、そのまま使います。
フレットは七分山で、かなり磨滅が進んでます。
更にFENDERよりもフラットなアールを持つ指板なので、チョーキングやトリルがやりにくい。
私の好きなスキャロップド指板に加工をしてやります。
ボディは、コンター加工の深いオールドスタイルで、割りと軽めなので材はアルダーなのかな?
あるいはジャパンアッシュとも呼ばれるセン?
2ピースで構成されています。
もっとも、1ピースボディなんてのは、よほどハイグレードなモデルに限られる話で、当時の日本製ではまずお目に掛かれません。
また、木材の収縮や変形を考慮すると、3ピース以上が望ましい、と言う説もあります。
塗装は、ポリウレタンやラッカーではなく、カシューでもないし、オイルサテンとも違う?
薄いニス塗装みたいなカンジで、素性がよくわからない仕上げ。
あえて目止めを施しておらず、材が呼吸できる状態にしてあるようです。
まずはバラします。
この「ヤマキ」のギター、FENDER STRATOCASTER の1954年型をコピーしていますが、単に真似ているだけではなく、オリジナルを元にしつつ、各所に独創的な工夫がされています。
まずこれ。

ネックエンドにあるトラスロッドの差込口をネックジョイントプレート面に引き出しているのです。
ウォームギヤを使い、力の伝達経路を90度曲げて、ピックガードや弦を外さなくてもトラスロッド調整が出来るようになってるのです。

すごいアイデアだと思うのですけど、トラス調整は一度終えれば、後はそう頻繁に行うものではないので、その必要性にはやや疑問があります。
ただ、スタジオミユージシャンの方などは、曲想・曲風により弦のゲージを変えたりする人がいるので、そういう場合には便利な機能でしょう。
また、この機構のザグリに掛かるように三桁の数字がスタンプされていますが、どうやらコレが型番を表しているよう。
上半分が切れて、600とも800とも読み取れ、判然としません。

1954年型の特徴である丸型ストリングガイド。
ブランドネームは、金色文字に黒のふちどり。
「PERFORMER」と言うのがモデル名のよう。
ネットで調べてみたのですが、ヒット数は少なく、型番を特定することはできませんでした。
おそらく、1970年代後半から1980年代前半に作られた6万円~8万円クラスの物ではないかと思います。
市場に出回っている玉数が少ないようで、データ不足です。

そして、またこの部分にもオリジナルなアイデアが使われています。
ナットから弦は糸巻のポストに向かって折れるのですが、このヤマキのギターでは、横方向にも、ギターかまえた状態の天地で言うと、地に向かって折れているのです。
ストラトでは、アーミングストロークの大きな個体の場合、思いっきりアームダウンすると、弦がナット溝から飛び出してしまうコトがあるんです。
私のU.S.A FENDER ANTIGUA がそうでした。
そんなトラブルを防ぐために、より大きなテンションを稼ぐ工夫かと思われます。
糸巻には「YAMAKI」の文字と、ゴトー製をあらわす「G」のマークが入ったロートマチックタイプが使われています。

ブリッジ部は、サドルの可動ストロークがFENDERよりも約2ミリ長くなっています。

ストラト型ギターでは、オクターブチューニングの際にサドルをボディエンド側に動かしていくと、オクターブが合う前に、サドルネジ固定部分にブチあたってしまい、行き詰まってしまうことが良くあります。
その問題を解消するためにこうなっているのでしょう。
コレも、オリジナルをコピーするだけではない「ヤマキ」の感心出来る方針が活かされている点ですね。
トレモロアームも、かなり太いものが採用されており、FENDERでは頻繁にアームを折っていた私ですが、これなら安心してグニョグニョアーミングもできます。
アーミング後の音程変化は、カウンターアーミングをしてやれば、私が通常使っているKORGのクリップ式チューニングメーター AW-2で計って、6弦.5弦がほぼ二目盛程度に収まり、他の弦は限りなく0目盛に近いので、実用上はまず問題ないでしょう。(チューニングメーターにより精度は異なります)
さて、ネックの加工からはじめます。

まずは、木工用鉄ヤスリの半丸を使って荒削り。
5ポジション付近から始めているけど、特に大きな理由は有りません。
やりやすい所から、です。
ネックエンド側ほど深く、一弦側ほど深く削ってやります。
フレットをキズ付けないように・・・・・と言いたいところですが、後でフレットのファイリングもしてやるのでこの段階では特に気にせず、マスキングも無し(笑)

荒削りを終えた状態。
フレット間隔が詰まってくるハイポジションは直径の細い丸ヤスリを使いました。

ヤスリの刃がカジッた跡が無数に残っています。

荒目のサンドペーパーをかけて、この跡を消してゆきます。

この時に、まちまちな削り深さや、スキャロップド面の不ぞろいなアールを修正してやります。
サンドペーパー処理が終わったら、塗装の準備に入ります。
まずは目止め処理。
砥の粉を塗ってから、半乾きの頃に布で粗拭きします。
この目止め処理を行わないと、木目の小さな空洞部分に塗料が染み込んでしまい、何度塗っても塗料がのらない状態になってしまいます。
ただ目の詰まった固い材質だと、この処理を行わなくても塗装可能な場合もあります。
ネックの材であるメイプルは、割りと固い木材なので、砥の粉処理は二回で十分でしょう。

砥の粉の拭き取りを終えた状態。
砥の粉を塗って、半乾きの拭き上げを繰り返す間に、電装品の交換作業を同時に始めます。
ピックガードを開けてみる。

ピックガード裏には全面にノイズ対策用のアルミ箔が貼ってありますが、今まで使ってきて特にハイ落ちなどは感じませんでしたから、そのままにします。

「ヤマキ」が自社開発したPUは、ポールピースに導電塗料を塗ってまとめてアースに落としてあります。

切れやすい巻き線部分の露出も、上からコーティングをかけています。
なかなか細かいトコロまで気を配った丁寧な仕事振りがうかがえますねぇ。
さて、これらのPUを外して、ビルローレンス L-250を組み付けて、PUから出ているワイヤは結束してやりました。
ビルローレンス L-250については、何度かこのブログで紹介しているので省略ね。

あらかじめ、ピックガードのPU穴は L-250に合わせて広げてあります。
日本の多くのシングルタイプに比べてやや大きく出来ているのは、わかってましたから。
FENDER なら、ほぼ無加工で付くのですが、やはりインチ規格とメートル規格の違いで同じ大きさに作ったつもりでも微妙な違いが生じるのでしょうね。
次に、ボディに仮組みしてやって当たりをみます。

ほんの少し、ピックガードが浮いてしまう。

L-250 はオリジナルのPUよりもだいぶ背が高い(厚みがある)ため、取り付けネジも長くなっています。
取り付けネジおよび、PUからのワイヤがキャビティー底面につかえてしまうようです。
赤い線でかこんだ部分です。
リアPUの取り付けネジは、やや短いため、たぶん大丈夫だけど、念のためにやはり浅い穴をあけました。

PU取り付けネジが当たる部分にハンドドリルで浅い穴をあけてやりました。

これ、深すぎるとウラのトレモロユニットのスプリングキャビティーまで貫通してしまいますから注意。
同様に、ワイヤの当たる部分にもドリルで浅い穴を無数にあけ、彫刻刀の丸刀で溝を掘ってやりました。

PUからのワイヤが集まる箇所は、ピックガードで見えなくなる範囲内で、ブリッジ方向へ横に逃げてやることにしました。
写真は加工中で、終了後はもっと広がります。
ふたたび、ボディに仮組みしてやって、不都合が無ければ電装品の交換および、ボディ加工は終了。
さて、ネックの方は砥の粉処理を終え、中塗りのサンディングシーラーを塗っては研磨、塗っては研磨の繰り返し。

写真は、一回目の研磨終了後。
下地が出てきますから、また塗ります。
この中塗り作業の途中で、フレットのファイリングを行います。
今まで使ってきてフレット山の高さは、ほぼ問題が無く、音ヅマリなどの不都合は出ていません。
したがって、磨滅して天面が平らになっている断面形状だけを直してやります。
こんな道具を使います。


フレットヤスリと言って、ヤスリ面がアールを描いているのです。
このヤスリで、フレット天面に毛筋一本ほどの非切削部分が残るように削ります。

ゴリゴリ。
極端に書くとこんなカンジ。

実際は、こんなにたくさん削りません。
そしてまたサンディングシーラーを塗って研磨作業。
この時フレット側面も研磨してやります。
都合、四回目で下地を覆うようにサンディングシーラーが全体にのり、平滑面が出てきました。
あとは、トップコートのクリアラッカーを塗って仕上げます。
でもこれも、一回で決まることはマレで、と言うか、一回で決めようとせず、二回三回塗っては研磨が普通。
塗装作業は、電工や木工などとは違って、根気強さが肝要です。
クリアラッカー塗り。

私は、スプレーガンを持っていないので、全て手塗りです。
クリアラッカーを塗り終わり、十分に乾燥させたら仕上げの研磨。

左から、よーこちゃんの会社の金属磨きピカール、これは塗装の場合荒目に相当。
次が装飾品などに使う銀磨き、これは細目。
いちばん右が、プラモデル用のコンパウンドで、仕上げに相当します。
磨き終了後の指板面。

ちょっとゴミが付いてます(笑)

少し中塗り研磨が不十分なところもあるのですが、突き詰めるとキリが無い。
ある程度のトコロで、妥協点を見付けださないといつまで経っても出来上がらない。
この後、三日間ほど放置して、塗装の収縮率の違い等による割れや、たるみが出てこなければボディに組み付けてやります。
完成!




PUが黒くなったので、トレモロアームも黒塗装のママにしました。
弦は、今まで張ってあった古いモノを使い、当たりをみてやります。
この時にナットの弦溝や、弦高を調整します。
更にアンプに通して、回路に異常がないことを確認してから、一週間ほど放置。
それでも各所に不都合は出てこなかったので、新しいエリクサーの弦に交換してやりました。

今後、私の新たな相棒として働いてくれるハズです。
comment
こういうことだったのです。
ハジメは、Gibson LesPaul Standard に付けようかとも考えていたんだが、やっぱり私はストラト弾きですから、手元にあるストラトを生まれ変わらせてみました。
コメント、有り難うございました。
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