ネック折れ修理
2019/03/10/23:56:46(Sun)
Ayaのエレアコ・ギター、Ibanez AEG10II TRS です。
コンパクトなボディにミディアム・スケールのネック。
ピエゾ・ピックアップ、チューナー、3バンドイコライザー、ハウリングを防止するフェイズ反転スイッチなどを備え、低価格の割りに必要十分なパフォーマンスを発揮するギターでした。
もちろん、買ってすぐにAyaが弾き易いように私の手でチューンナップしてます。
下の写真に見える猫の足跡型ポジションマークも後付け。 でも、カラーはパールホワイトにした方がヨカッタなぁ。
ところが、そんな彼女お気に入りのギターがネック折れ!

ナットより少し前方から見事に離断してしまいました。
哀れ!


当然、Ayaはとても悲しみました。
木目がはがれるように斜めに折れた場合は接着面も広くなり、十分な接着強度を確保出来るんでしょうが、断面がほぼ指板に対して 90度になっています。
これでは、単なる接着ではなく、補強も必要でしょう。
リペアショップに出すと4、5万円以上はかかります。
すると、このギターの購入価格を上回ってしまう。
そこで、私が修理することにしました。
まぁ元々、リペアショップに出す気はなく、「黒猫商会」初の大仕事にしようと思っていたんですけどね。
接着剤はコレを使います。

Z氏よりお借りしたアメリカ、フランクリン社製「タイトボンド」
木工用としては、最強の接着力を持っています。
借りたと言っても、使った分をお返しすることは出来ないんですけどね。
まぁ使用量は、ごく少量ですので。
補強用の芯材。

鉄製で4φのネジ材、長さ40センチあったモノを6センチほどで二本にカットしました。
本当は木材を使うのが良いに決まってます。
構造部材に異質の材が加わると、音も変わってしまうでしょう。
しかしココは、より強度の確保を目指しました。
ネジ材を使ったのもネジミゾによる、より多くの接着面積を稼ぎたかったためです。
さて、まずはヘッド側に芯材を埋め込むための穴を開けました。

この図のように仕込むので、ヘッド表面にキリ先が飛び出さないように注意深く作業を行います。

キリを差し込む角度や、長さなどを慎重に計って行うのが普通でしょうが、私は過去の経験から、どんなに綿密に計測しても失敗する時は失敗すると言うコトを知っています。
よって全て、見当と勘で行いました。
ヘッド側に芯材を接着・埋め込みが終わった状態。

接着剤は、エポキシ系のニ液混合タイプを使用。
充填接着し完全硬化した後、不要な部分を丁寧にナイフやニードルなどで削り取ってやります。
木材同士が密着しなくなりますからね。
ネック側にも下穴を開けます。

こっち側にはトラスロッドの末端がありますから、特に注意が必要。
と言っても、やはり勘で行いました。
何度も仮組みをして、当たる部分などを修整。


この段階で、ピタリと両端が密着しなければ、下穴などを調整してやります。
まったく、根気の要る作業です。
キチンと密着するようになったら、いよいよ接着作業です。
まずネック側の下穴に先述のエポキシ系接着剤を充填。
タイトボンドと干渉したくないので量の見積もりが難しいですが、やっぱり勘で行います。
次に断面にタイトボンドを多めに塗り、まずは腕力で圧着。
この時、ボンドがアチコチに垂れて付着しますが慌てて拭き取ったりしてはダメ。
完全硬化してから、丁寧に剥がしてやる方がキレイに除去出来ます。
その後、ネック側をカマボコ板二枚で挟んで、ゴムで引っ張り力をかけてやります。

ゴムは、自転車のタイヤバルブ用の虫ゴムを1メーター買ってあったので、それを使用。
2弦、5弦のペグが外してあるのは、ここもカマボコ板で挟むつもりだったからです。
結果的に、1弦と6弦のペグに引っ掛けるだけで済みました。
ゴムは、ヘッドがどの方向にも倒れず、ちゃんと決まった位置に固定される用にテンションを調整します。
この工程は、Ayaと二人がかりで行いました。
プロはどうやっているのかなぁ?
この状態で、時々様子を見ながら数日間放置。

完全硬化したら、次は接合箇所の修復に移ります。

若干の段差が生じてしまいましたので、まずはサンドペーパーがけ。
段差が無くなるまで荒削りしてやります。
塗装も削ってしまうことになりますが、気にしない。
荒削りを終えると、ボンドのヒケや、小さな気泡などが見えてきます。

ウッド・パテを使って、それらを埋めてやります。
そしてまたサンドペーパーがけ。

徐々に番手を上げてゆき、1200番くらいで終わり。
その後コンパウンドの荒目→金属磨き→コンパウンドの細目の順で磨き上げました。
ただ元々、このネックはツヤ消し仕上げだったんですよ。
この部分だけツヤ有りに成ってしまった。
だが、塗装をした後フラットクリアを吹いてやるという手もあります。
こんな状態になってます。


ナット付近のヘッド表面にも亀裂や、はがれ欠落があるので、同様にウッドパテで補修してやります。

塗装をすれば、ほとんど目立たなくなるでしょう。
補修後ナットを取り付け、試しに弦を張ってみました。

一応用心して、ゲージは .010 を張っています。
この状態で、また何日か放置。
補修した部分の木材やパテに、浮きや新たな亀裂が出なければ、成功と見て良いでしょう。
生き返った!

さて、このネック折れ修理を行ってからひと月以上が経過しましたが、今のトコロ異状は顕れていません。
なお塗装は、もう少し様子を見てからにします。
UFOやMSGでおなじみのマイケル・シェンカーが使っていたギブソン「フライングV」1971年製は、何度もネックが折れて、そのたびに修理されています。
マイケル本人によると、
「修理のたびに音が良くなって戻って来た」
と語っていますが、ホントかね?
私は、この意見に懐疑的でした。
でもね、今回このギターを修理してみて、以前よりも胴鳴りが良くなっているように感じるんです。
ネックを修理して胴鳴りと言うのも変な話ですけど、まぁ楽器と言うのは全体で鳴っているんですから、影響無しとも言い切れない。
「音響工学的にみて、どうなのさ?」
と言われると、私は専門家ではないので、手も足も出ません。
すべては、私の気のせいかもしれませんが・・・・・
ともあれ、今のところフツーに使えてます。
お店に置くために、エレアコは何本かあるのですが、Ayaもこのギターがイチバン弾き易いと気に入ってくれています。
私はギター工房などで修行したことはありません。
すべて自己流・無手勝流です。
プロのリペアマンから見れば、笑っちゃうようなコト、あるいは無謀な部分などもあるハズです。
ですが今のところ、私が手がけたギターやベースは問題なく活躍してくれているようです。
【黒猫商会】では、ギター・ベースの簡単なリペアを受け付けています。
この記事を読んで、こんな私の「なんちゃってリペア」でよろしかったら、相談に来てみて下さい。
なお、そのギター固有の破損状況等により、お受けできない場合もありますことを御了承下さい。
あっ、それから中古ギター・ベースや、エフェクターなども販売してます。
中古衣類や雑貨も扱ってます。
古物商免許はAyaが取得済み。
興味のある方は覗いてみてね。
長文の記事、読んでくれてありがとう。
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